
1週間、あいてしまいました。
ちょっとだいぶ疲労をためこんでしまい、ブログ更新できませんでした。
この週末は休んだので、少し復活。
徐々に元気になっていこうと思います。
今日、紹介するのは絵本ではなく、小説です。
山田宗樹『きっと誰かが祈ってる』幻冬舎、2017年
めずらしいのですが、(本当にないんです)乳児院のことを描いた作品です。
著者は、「嫌われ松子の一生」を描いた山田宗樹さん。
「嫌われ松子」の映画は大好きで、実際著作は拝見していないのですが、
でも、それなら期待できるかも?と手に取りました。
本の紹介はこちら。幻冬舎のページよりお借りしました。
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すべての子どもが、心から愛してくれる人を求めている。 たとえ、望まれず生まれてきたとしても――。 親の病気や生活苦、疾走、虐待や育児放棄など様々な理由で実親と暮らせないゼロ歳から二歳までの乳児が生活する乳児院。この乳児院である双葉ハウスでは、赤ちゃん一人ひとりに養育担当者を決めている。赤ちゃん(乳児)にとって絶対的な安心感を与える<特別な大人>を、双葉ハウスでは<マザー>と呼び、赤ちゃんとマザーは擬似的な親子関係を築いていく。しかし、その赤ちゃんが二歳を迎える前にその親子関係は終わることになる——子どもが物心つく前に。 双葉ハウスに務める島本温子は、保育士歴12年になる今でも、担当児と別れる時には身を切られるような喪失感に襲われる。だが温子が最初に担当した多喜と別れるときには、今からは想像もできないほど大変な騒ぎになった。その我が子同然だった多喜が不幸になっているのではと思った温子はある行動に出る……。「嫌われ松子の一生」「百年法」の著者が、乳児院とそこで奮闘する保育士を描く、あふれる愛の物語。
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これから変化をしていくであろう、乳児院ですが、
現在の乳児院の姿をあたたかく、優しく描いた作品です。
「育ちをつなぐ」そのことを一番考えさせらる施設である乳児院。
里親に委託されるまで、児童養護施設へと「つないで」いくために、
施設という限界を踏まえながらも、乳児期の子どもに寄り添っていく。
乳児期の子どもには、自分の呼びかけにすぐ応えて、快い感覚で包んでくれる存在が不可欠だ。そういう<特別な大人>を獲得できた子どもは、自分は愛される価値があるのだという確信を、心の深いところに刻むことができる。これが、人として生きていく土台になる。(4ページ)
そして、ただ単に乳児院を神聖視せず、
子どもを託した後の、保育者の喪失感にもしっかりと触れられています。
なかなか辛いものがあります。
サスペンスも盛り込まれ、手に汗握る場面もあります。
そして、そのあと、
主人公の女の子が生まれ育った乳児院に来て、その生い立ちを振り返る場面も描かれます。
自分の赤ちゃん時代の写真を見て、
「かわいい・・・」
思わず口から漏れた。その瞬間、自分の中にあった空白を、いちばん土台のところにあった空白を、ようやく埋めることができた気がした。そして、確信した。
わたしは存在している。
この世界に存在している。
そして、これからも存在していいのだ。(218ページ)
「きっと誰かが祈ってる」
そのことを、子どもが感じられたなら、
生きることは少し楽になるときがあるかもしれません。