2018年、はじまりました。本年も、こどもと家族の小さな図書館「ちいさなとびら」細々とではありますが、ひとつずつていねいに発信していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
今日ご紹介する絵本は、私にとって、大好きで大切な絵本です。『あなただけのちいさないえ』(ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ(作)・アイリーン・ハース(絵)・ほしかわなつこ(訳)、童話館出版、2010年)です。私は童話館のブッククラブもとっているのですが、この絵本は童話館ではなく、鈴木潤さんの選書で送っていただきました。原作は1954年。半世紀以上生きている本です。

絵本はこんなふうに始まります。
「ひとには だれでも、そのひとだけの ちいさないえが ひつようです。
おとこの子は だれでも、その子だけの ちいさないえを もっているものです。
おんなの子は だれでも、その子だけの ちいさないえを もつようになるでしょう。」と。
ここでいう、「ちいさないえ」というのは、いわゆる住居としての家を指していません。
そして、作者によって「ちいさないえ」とは何か、伝えられていきます。

「いろいろなところが、ひみつのいえになります。
あなただけの ちいさないえになるところは、いくつもあります」
と書かれ、おおきなかさ やぶのうしろの くぼみ も 「ちいさないえ」になることを伝えています。
そして、子どもにも、おとなにも、「ちいさないえ」はあって、
誰かが「ちいさないえ」に入っているときには、そのことに対する尊重が大切であることを伝えています。
「ちいさないえ」をどうとらえるのかということは、読者に委ねられています。
私自身は、その人がその人であるための ひとりでいるための時間や場所
孤独という自由をイメージしました。
なんかこう書いてしまうとつまりませんね。
やっぱり、「ちいさないえ」は「ちいさないえ」で、人にはそれぞれ誰にも入ることができない
「ちいさないえ」があるというほうが、しっくりとイメージできる気もします。
子どもの権利条約には、子ども自身の秘密を守る権利があります。
子どもにとっての「ちいさないえ」を守る権利だと思います。
親であれ、支援者であれ、子どものプライベートはまもらないといけない、
そんなことも教えられます。
そして、大人にとっても、育児を頑張っている方や、養育を担っている方にとっては、
「おかあさん」「おとうさん」という役割を時には脱いで、
「ちいさないえ」に入ってもよいのだと伝えてくれているようにも思います。
モノクロの繊細な絵とともに、とても大切なことを優しく伝えてくれる絵本です。