こんにちは。いったん寒さがゆるみましたが、今週は冷えそうですね。みなさま、お大事にしてください。
今日ご紹介する絵本は、『王さまと王さま』(リンダ・ハーン/スターン・ナイランド(文・絵)アンドレア・ゲルマー(訳)・眞野 豊(訳)、ポット出版、2015年、1500円)です。カナダのトロントで幼児教育を専門にしている先生に「好きな、おすすめの絵本はある?」と尋ねたときに、この絵本を教えてもらいました。その時はまだ翻訳本は出ていなくて、翻訳された日本語版が発刊され、うれしかったです。

出版社からの紹介文はこちら。http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-7808-0221-4.html
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王子さまとお姫さまの物語でなく、王子さまと王子さまが結ばれるお話があっていい──。LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)をテーマにした絵本です。英語、ドイツ語、スペイン語、デンマーク語、チェコ語、ポーランド語など9言語に翻訳され、世界各国で読まれている、オランダ原作の『Koning & Koning』を日本語訳。渋谷区同性パートナーシップ条例を皮切りに、LGBTへの関心が高まっているなか、日本にはLGBT関連の絵本は少ないのが現状です。世の中には多様な性が存在することを、絵本で子どもたちに伝えたいという訳者からのメッセージ。シンプルなストーリー、楽しい絵柄で、読み聞かせにもぜひ使ってもらいたい絵本です。
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訳者の方のメッセージも載っていました。
子どもたちは、絵本を通してさまざまなことを学びます。その中には、恋に関するものもあります。これまでの絵本に描かれてきた恋は、お姫さまが王子さまと結ばれるという、異性愛を前提としたお話ばかりでした。しかし実際は、異性に恋をする人だけではありません。同性に恋をする人もいれば、恋をしない人もいます。この絵本『王さまと王さま』に登場する王子さまのように、ほかの王子さまと結ばれたり、また、お姫さま同士が結ばれたりするお話も必要です。[中略]
これまでは、異性を好きになるのがあたりまえとされ、それ以外の性的マイノリティの存在は忘れられがちでした。しかし、いつの時代にも、どの社会にも、どの学校にも、性的マイノリティはいます。そうした存在を無視することはできません。私たちは、子どもたちが幼い頃から性の多様性について学ぶことが大事だと考えています。[中略]
私たちは、『王さまと王さま』が多くの子どもたちに読まれることを願っています。この絵本を通して、性的マイノリティは特別な存在ではないこと、私たちの社会にあたりまえにいる存在であること、異性を好きになることと同じように、同性を好きになってもちっとも不思議ではないことを多くの子どもたちに知ってほしいと思っています。
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訳者の眞野豊さんは、性の多様性と教育について博士論文を書いておられ、指導教官のゲルマ―さんにこの絵本の日本語版を出版したいと相談し、発刊に至ったそうです。眞野さん、素敵な作品の日本語版出版をしてくださって、ありがとうございます。
「おひめさまが王子さまと出会って、めでたく幸せに暮らしました」
だけではないあり方があって、どのようなあり方も美しく、しあわせなのだということが
シンプルに伝わってくる作品です。絵も鮮やかで、ユーモアもたくさん。コラージュ等も用いたポップな印象です。
先日、授業で学生さんが読み聞かせをしてくれていて、
改めて良い絵本だなあと思いました。
絵本に込められているメッセージもすてきですが、それ以上に読み終えた後、なんだか楽しい絵本なのです。
ポット出版、ほかにも素敵な作品がいっぱい。
ぜひ、ウェブサイトをのぞいてみてくださいね。
http://www.pot.co.jp/books/booklists/