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やめるときも、すこやかなるときも

おはようございます。
今年は、子どもが小学校入学でバタバタしています。
自分が思った以上にドラスティックな変化があり、大変です。

本当は、桜が咲き誇る美しい季節に紹介したかった一冊。
窪美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』(集英社、2017年、1,600円)
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出版社の内容紹介は、こちら
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大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。

欠けた心を抱えたふたりが出会い、お互いを知らないまま、少しずつ歩み寄っていく道のり。
変化し続ける人生のなかで、他者と共に生きることの温かみに触れる長編小説。
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私は、『母の友』の紹介で知りました。
もともと窪美澄さんの小説は好きなんです。
状況が止まっている、停滞している状況にある人や家族が
本人のすこしの努力、でも、努力だけじゃない、
でも、棚ぼたではない何かによって、
状況が動いていく、変化していく、その様子やプロセスを描くのが非常に上手な作家さんだと思います。
現代家族のおかれた状況を描くのも非常に上手。
読んで、何か、救われます。

『母の友』では、「めっちゃ恋愛小説」みたいに書いてありました。(ものすごい意訳です)
私は、「窪さんの新作だ、読もう♡」と思っていたところ、妹が貸してくれ、そのままもらいました。

読後の第一の感想は、
「喪失と回復の物語だ」というものです。
主人公の喪失はなかなか深い。それでも、周囲にいる人たちのたんたんとしたあたたかさ、
生きる姿勢も読んでいて、ほっとするものがありました。

変わらず、「家族」も描かれています。家族の鎖のなかにいる主人公が
一歩ずつそこから出ようとする姿は、涙がでます。
貧困の問題も描かれています。貧困が家族や人の何を奪っているのか描かれます。

心に残ったことば。
「相手を知りたいと思うことは自分の秘密をも明け渡すことじゃなかったか。そんなことが僕にはできるのだろうか」
「声がいつでも出る人間だって、思いや気持ちを声にできないときがあるんだ」

春は、切ない季節です。
桜の季節にご紹介できなくて残念。
新緑が始まって、私は少しほっとしています。
主人公ほどでなくとも、多くの人が小さな喪失を抱える季節でしょう。
そんなときに、しみじみと味わえる本かもしれません。

by chisanatobira | 2018-04-08 11:29 | 喪失

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by chisanatobira