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親子の手帖

こんにちは。さわやかな新緑の季節です。
雨の合間のごほうびのような晴天に心洗われます。

今日、ご紹介するのは鳥羽和久さんの『親子の手帖』(鳥影社、2018年、1,200円)です。
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出版社による内容紹介はこちら。

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福岡市のランドマーク、大濠公園近くにある現代の寺子屋。いつもキャンセル待ちが続く教室には150人以上の子どもたちが通っています。全県1位の模試成績をとる生徒を毎年のように輩出するれっきとした学習塾なのに、1階のイベントスペースでは、ディープなゲストたち(2017年には東浩紀、石川直樹、坂口恭平、寺尾紗穂、中島義道ら)が、夜な夜なトークを繰り広げています。

『親子の手帖』で描かれているのは現代の親子のリアルな姿。寺子屋の中心人物である著者は、内容について「すべてフィクション」と語りますが、そこには、身を粉にして一心に親と子に寄り添ってきた人にしか書けない、親子の真実が切々と綴られています。だから、読む人が子育て中の親の場合には、この本と向き合うために少しの覚悟が必要でしょう。なぜなら親の現実をえぐる内容が続きますから。でも、それは決して親を責めるために書かれたのではなく、子どもの幸福のために、さらに、かつて子どもだった、いま毎日を懸命に生きる親のために書かれたもので、著者の徹底した(上目線でない)横目線からは、親と子への深い愛情が感じられます。話題は子育てにとどまらず、現代のさまざまな課題(たとえば障害者問題など)にアプローチしていますので、親ではない大人にもおすすめいたします。
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良い本でした。

鳥羽さんが出会った子どもと家族を平たい目線で観察して、
ご自身のなかから生み出される言葉を丁寧に紡がれた本です。
人によっては心をえぐられるような思いになるかもしれないですが、
鳥羽さんは誰も責めていません。とてもとても優しい。

同世代にこのような方がおられるんですね。そのことだけでも、なんだか力をいただきます。
『親子の手帖』となっていますが、話題は親子を基軸としつつ、現代の大人と子どもの関係性のありかたを描いています。
何が子どものちからを奪うのか、何がおとなにできるのか…
児童養護施設等社会的養護の現場で奮闘されている方たちにも、得られるエッセンスは多くあると思います。

鳥羽和久さんが運営されているのはこちら。
唐人町寺子屋 公式サイト http://tojinmachiterakoya.com/

学習塾の運営、中退した子どものセーフティネットをつくるため単位制高校、そして、
同じビルのなかに とらきつね というイベントスペース&雑貨店を経営されています。
本文中で鳥羽さんは、「世界は広くて自由だと、いろんな選択肢があるのだ」と伝えるためにそのお店を始めたのだと書かれています。
いつか行ってみたい。

さて、『親子の手帖』。読み始めると、ぐいぐいと読んでしまいます。
いろんな気もちになります。
私が、「はいはい、私です~」と心のなかで小さく手をあげたのは、この一文。

“親は、子どもの「いま」が持つ自由と尊厳を容易く踏みにじります。”

鳥羽さんは、次のように続けます。

“親が子どもと繋がるために必要なことは、子どもの「いま」と向き合うことです。
もう少しわかりやすく言えば、子どものいまの動きを見ることです。巷のあらゆる方法論(ハウツー)の中に書けているのは、この「動き」を見るという視点です。例えばサッカーやバスケットボールの試合、能や文楽の舞台などで行われているコミュニケーションは、まさに「動き」そのものを司令塔として共感的な空間をつくるということであり、子育てにおいても、互いが分かり合いたいのならば、自ずとこの観点が必要とされるのです”

これ、私できていないなあ、と反省しました。そして、なぜなんだろうと振り返りました。

子どもたちが幼い頃、親は自分の「いま」が子どもによって分断される日常を生きていると思います。それは、養育の営みの特徴で、子どもの要求が常に先にあって、私たちはそこに応答をしていく必要があるから。そこに応答をしていくことで、子どもは自身を生きていく根っこをつくっていきます。かつては、大勢のおとなが子どもの周りにいたので、子どもの要求を分散して受け止められたのかもしれません。でも、現在は、それを一人か二人の大人がそれを担う。大人は、「わたし」の時間がない、もしくは、「わたし」が途切れ途切れの日常を生きることになります。

自身を顧みると、娘に対して「私はそんなふうにあなたとの付き合いを行ってきた」、だから、それを娘にもやっていいと思っているのかも?!と自分に対して思いました。でも、子どもの要求とおとなの要求は違うはずです。子どもの要求は、悪意があって、もしくは、コントロールできるものとして表出されない。大人は、少なくとも時期をみることができるはず。

このニーズと応答の話は、いろんな場面で考えられますね。
子どもの「いま」を丁寧にみていく支援は、子どもに寄り添った実践をされている児童養護施設を思い出します。

とりあえず、私の要求は、子どもの「いま」を観察して出していく練習をしようと思いました。「いま」を尊重する私でいたいです。大変残念なことになっていた私ですが、今気づけてよかった。鳥羽さん、ありがとうございます。

他にも、叱り方のポイント10は、子どものみならず様々な場面においても応用のきく、考えさせられる内容です。差別と学力の問題、学力の高い学校へ行くことの良さと失われるものについての論考も同感です。「理解のある親と子どもの精神」もよかった…。最後の、「4 親にとっての子育てとは」は繰り返し読みたくなります。

まさに、『親子の手帖』。
ふとしたときに手元に置いて、読み返したい一冊です。

そして、ここからお知らせです。
鳥羽さんが、『親子の手帖』出版刊行記念イベントで関西にいらっしゃいますよ。
https://terakoyant.exblog.jp/26826781/
6月22日(金)にメリーゴーランド京都、23日(土)にスタンダードブックスストア心斎橋店です。

by chisanatobira | 2018-06-04 13:25 | 養育・子育て

子どもと家族の小さな図書館「ちいさなとびら」をしています。絵本『子どもの権利と新型コロナ』の最新情報は、ツイッター @kodomonokenri_c、Facebookページ「子どもの権利と新型コロナ」をご参照ください。


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