
こんにちは。
明日は、いよいよ梟文庫でのアクロストンさんたちのワークショップです。
楽しみです。
今日ご紹介する本は、『ライオンさんにはなそう いやなことがあったけど、はなすのがこわいの』(パトリシア・キーホーさく キャロル・ディーチえ 田上時子翻訳、ビデオドック発行、木犀社、1991年)です。
出版社による書誌情報は、こちら。
******************************
性的虐待を受けた子どもを助ける入門書
いやなことがあったことをはなすことから
******************************
記事を書くために書誌情報を調べていたら、
この本はどうやら絶版になってしまっているようです。
私は、この翻訳者の田上時子さんの作品から多くを学んできました。
昨日紹介した『
ムンメル』は、スウェーデンの本ですが、
こちらはカナダ。
1987年に発刊された絵本が日本では1991年に翻訳されています。
今の日本ですら、「ええ!これを子どもに話してしまうのですか?」
と人によっては驚いたりされると思います。
学生に読み聞かせをしても、なんとなく空気がどよめきます。
例えばこのページ。
性器の名称を明確に伝えています。
別のページでは、大人はセックスをすること、子どもはしなくてよいことも伝えています。
現在の日本では、そのことすら子どもたちは知らないまま大きくなっている。
同じく田上さんが所属する女性と子どものエンパワメント関西で紹介されている
『メグさんの性教育読本』を書かれたメグさんは、
子どもが性器の名称を知っていることそのものが、子どもが暴力に遭うことを防ぐと話されていました。
加害者が恐れるのは問題が明らかになること。
性器の名称を知っていたら、子どもがそのことを伝える言葉を持っているということ。
だから、暴力に遭いにくくなると。
性的虐待の実態が把握され、その事実のもとに、まず子どもにメッセージを伝えようという
姿勢があります。1987年の時点で。
私は、子どもの福祉関係を授業で担当するようになってから、「虐待を受けた子どもと対話をするときに」
というテーマでずっと教材として使用しています。
虐待でなくても、子どもでなくても、暴力というものに遭遇してしまった人に向けて
人が何ができるのか、ということを考えさせられる本です。
ここに出てくるライオンは、子どもにやさしく対峙しますが、その姿勢から学ぶことが多くあります。
・相手を責めないこと 「いろんなわけがあるけれど、どれもきみのせいではないよ」
・暴力・虐待について子どもに分かりやすく説明すること
・感情の表出を助けていること
「かなしかったり、つらかったり、おこったりしたら、だれだって、なきたいきもちになるさ。
ないてしまえば、きがらくになるよ」
・具体的な解決方法を明示していること
「いやなきもちは、すぐにぜんぶはなくならないけれど、はなすことは、きっときみのためになるからね」
・随所で子どもを承認し、言葉にしていること
「ほんとうに、きみは、ゆうきがあって、えらいよ」
なかなかすぐには、この絵本のライオンにようにはなれない。
それでも、繰り返し読んでいることとで学びが身体化されていくように思います。
ぜひ声に出して読んでほしい、支援者におすすめの絵本です。
『ライオンさんにはなそう』は絶版ですが…
こちらは昨年復刊しました。

『いいタッチ・わるいタッチ』と基本コンセプトは同じです。
『ライオンさんにはなそう』、『わたしのからだよ!』が発刊された当時のことが
復刊にあたって(2017年)複数の新聞社に取材されています。
こちらのページから見ることができます。
よろしければご覧ください。