
世間のニュースは、胸が痛むものも少なくありません。
それでも、うららかな春はやってきていて、
花粉症だけど、胸いっぱい空気を吸いたくなります。
久しぶりに小説を読みました。
先日遊びに行った研究者のお友達にすすめられた一冊。
出版社からの紹介文は、こちら。
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祈祷師の家に育った主人公、春永はお父さん、お母さんとは血がつながっておらず、
お祓いの能力を持っていません。
姉の和花ちゃんには霊能力があり、祈祷師をつぐことになります。
自分に霊能力のない春永は悩みますが、
中学校での恋のまねごとのような人間関係や、
霊能力を持ってしまった小学生の女の子とのふれあい、
そして実の親に会いに行く小さな旅を通して、少しずつ自分らしさをつかんでいきます。
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爽やかな読後感の小説でした。
小説のなかでは、
「霊能力があること」が、
家族の「血縁」を象徴するものとして描かれます。
それを持たないでいる主人公の春永は、
そのことに対して葛藤をもちながら、
でもしなかやかに、自分を受けとめて生きることを受け入れていこうとします。
同質性の高い中学校という環境のなかで、
その現実にもまれながら。
自分が自分であること、
誰にも変えられないことはあって、
そことどう折り合って生きていくのか、
小説のなかでの人物たちは
それぞれ迫られるのですが、
その時の主人公春永のあり方には
思わず涙が出ます。
施設で育つこと、
里親のように血のつながりのない家族のもとで生きること、
自分が選んだことではない育ちのなかにいるときに、
あるいは、
変えられないけれども、嫌になってしまうような
自分を抱え続けないといけないとき。
そんな時にそっと寄り添ってくれる物語であるように思います。
施設や里親さんの本棚にそっと置いておきたくなります。
見ていないけれど、ハードカバーのほうが
挿画が効いていて、よさそうです。