
今回紹介する絵本は、『子どもの権利ってなあに?』
(アラン・セール 文・オレリア フロンティ 絵・福井 昌子 訳・
反差別国際運動(IMADR) (監訳)解放出版社、2020年)です。
表紙には世界中のさまざまな子どもが描かれ、
ページを開くと色鮮やかで美しい絵が飛び込んできます。
「子どもにも、目があるように、手があるように、
声が出せるように、心があるように権利がある」という言葉で始まり、
絵と文を読んだときに、一目で権利の具体的な内容が伝わってきます。
一つひとつの絵がカラフルで広がりがあり、
多様な子どもたちが生き生きと描かれています。
作者から直接語りかけられているような文であることから、
その育ちに何が必要かを子どもが理解するとともに、
一緒に読むおとなとあれこれと考えたり、語り合ったりすることができるように思います。
最後の一文、
「子どもの権利は、今この瞬間にだいじにされる必要がある。
だって子どもはまさに今、子どもなんだから」
という言葉は、日本の子どもたち、そして、
子どもの育ちにかかわるすべてのひとたちに伝えたくなるものです。
日本の子どもたちは、将来のために習い事や塾に多くの時間を
費やしているように思うからです。
子どもであるという時期を、おとなになる未来のための準備期間はもなく、
「今・ここ」が尊重されることが大切ではないでしょうか。
子どもである時間は限られています。
子どもであるということの尊厳と、子どもである時間、
その瞬間を尊重するにはどうしたらよいか、
その指針となる子どもの権利の視点をまるごと学べる作品です。
子どもの権利条約は、人類の歴史において繰り返される戦争や、
子どもの生きる過酷な現実のなかで紆余曲折を経て誕生しました。
「人間らしく生きる」ことを子どもにも実現しようと
格闘した人々の知恵がこめられています。
法律というと、多くの人にとっては、
少し遠くに感じてしまう面もあるかもしれません。
それでも、法律がつくられたり、改正されたりするプロセスを知ると、
少し身近なものとしてとらえることができます。
最近の例では、2020年4月に体罰の禁止が盛り込まれた
児童福祉法・児童虐待防止法が改正されたことをあげたいと思います。
この法改正の背景には、さまざまな関係機関につながりながらも
体罰によって亡くなってしまった2018年3月の結愛さん、
2019年1月の心愛さんの事件があります。
子どもが亡くなり、その当時の法律とそれに基づく社会制度では
救うことができなかった反省から法改正はなされました。
法律ができたからといって、すぐに社会が変わるわけではありません。
それでも、法律ができ、それに基づく制度があり、
私たちはその基盤のなかで生きているのです。
国連で子どもの権利条約がつくられたのは、1989年11月20日。
今年で33回目のお誕生日を迎えるということになります。
1994年に批准をした日本は、長らく国内法を整えてきませんでした。
変化はここ最近に起きています。
2016年の児童福祉法改正により子どもの権利の理念が盛り込まれ、
2022年6月15日、子どもの権利の理念が盛り込まれたこども基本法が成立しました。
ユニセフによれば、11月20日は「世界子どもの日」。
子どもの権利の認識向上や子どもの福祉の向上を目的として、
世界中で催しが行われているそうです。
皆さんも、何か小さなアクションをしてみませんか?
子どもの権利にかかわる絵本を展示する、図書館に子どもの権利に関する絵本や
書籍をリクエストする、子どもの権利条約をじっくり読んでみる、
などはいかがでしょう。
出版社の垣根を越えて作成された
も参考になさってください。