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子育ては親だけでするもの?『みんながおしえてくれました』

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今回紹介する絵本は、
『みんながおしえてくれました』(五味太郎 作・絵、絵本館、1983年)です。

初めて読んだとき、
「これは、本来、子どもという人たちがどんなふうに育っていくのか、
子どもの側の視点から描いた作品だなあ」と思い、繰り返し読み返しました。
(最初の印象をまとめたブログ記事は↓)


どのような作品かというと…、
子どもが日々過ごす中で、世界にあるさまざまなものたちから、
いろいろなことを学び成長する姿が描かれたものです。
そのことが順々に伝えられていきます。

例えば、こんなふうに。
「きもちのいい おさんぽの やりかたは にわとりに おしえてもらいました」
「つちのうえの できごとや つちのなかの ひみつは ありが おしえてくれました」

絵本館webサイトより(https://ehonkan.co.jp/ehon/037/

私のお気に入りは、
「わるものを やっつける たたかいかたは ゴリラに おしえてもらいました」
というもので、ゴリラとともにキックをする女の子の姿がすがすがしくて、
何度も見返してしまいます。

おとなが登場するのは、最後のあたりです。
そして、そこに添えられている五味太郎さんの言葉が、
子どもに対する信頼が存分に感じられ、読むたびに励まされる思いになります。

「それに そもそも わたしは うまれつき かんがえるひとだし いろいろ おぼえるひとでも あるし…」
「ほかに いろいろ こまかいことは このひとたちが おしえてくださいますし、」
「なにしろ ともだちがたくさん おりますから どうみても りっぱなひとに なるわけです。」

子どもは、人、とくにおとなとの関係のなかだけで大きくなりません。
動物や草花、虫たち、世界にいきるさまざまなものや人に出会って、
教えてもらって、育っていきます。
保護者に対する期待が過度に高い社会だからこそ、
それを緩やかに手放させてくれる絵本だと思います。 

そして、「みんながおしえてくれる」なかで、
それを受け取るかどうか、
それは子ども自身にかかっています。

子どもがもともと持っているその力を、
私たちは大切にできているのでしょうか。
受け取る子どもの視点とその力を信じることの大事さを教えられる絵本です。
(ちゃいるどネットOSAKA vo1.111 2023.1掲載)

by chisanatobira | 2023-03-01 16:56 | 養育・子育て

子どもと家族の小さな図書館「ちいさなとびら」をしています。絵本『子どもの権利と新型コロナ』の最新情報は、ツイッター @kodomonokenri_c、Facebookページ「子どもの権利と新型コロナ」をご参照ください。


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